本議会は、平成28年度の当初予算案を審議していただく議会でもありますので、私の所信の一端を申し述べます。
平成28年度は、知立市にとりまして、『まち・ひと・しごと創生総合戦略』実行元年であります。
知立に住み続けたい方の割合は、2007年(平成19年)59.5%から、2013年(平成25年)に67.1%と上昇しています。
現在、推進しています第6次知立市総合計画と併せ、“知立市に住みたい、住み続けたい”まちづくりのために、スピード感を持って各施策に取り組んでまいります。
知立市が目指す将来像は、『輝くまち みんなの知立~安らぎ・にぎわう、住みよさを誇れるまち~』であります。
知立に住む、知立に集う、全ての方々が、知立のまちを自分の家庭のように感じていただき、まちづくりにそれぞれのお立場で、より良い自分の家庭をつくるように携わっていただく、「自助・共助・公助が息づく協働のまち」とすることで、知立市は眩い輝きを放っていくものと確信をしております。
そして現在、様々な場面において着実にその芽が出てきております。
例えば、現在、高齢者サロンが市内18箇所で開設されていますが、いずれも地域の皆様方が中心となって行っていただいており、サロンで催される踊りや演奏などもボランティア団体の皆様方が披露してくださっている他、毎朝のラジオ体操も、市民有志の方が身近な公園などを活用され、現在、毎朝のラジオ体操は6箇所にもなりました。
また、知立青年会議所主催の【C1フェスティバル】は、知立の新名物の発掘、合同縁日、ご当地クイズ、ステージイベントなど様々な催しでたいへんな盛り上がりでした。
また、昨年に引き続き、実行委員会の皆様方が企画運営をして下さってパティオで開催された【ちりゅうこどもフェスティバル】や、新地公園で開催された【ドリームイルミネーション】も、子どもから大人まで多くの方々に感動を提供され、まちの科学館設置を目指す市民団体 ナスもル知立主催の【1日まちのふれあい科学館】や、NPO法人バザール知立主催の【道の市】もパワーアップしながら開催されており、それぞれ着実に定着してきています。
また、防犯パトロールや、環境ボランティア、子どもたちの登下校におけるスクールガード、公園や道路の愛護会の皆様など、様々な分野でそれぞれのお立場で、より住みよい知立市のためにご尽力をいただいています。
ボランティア団体につきましては、市民活動センターへの登録団体だけでも120を超え、それ以外にも多くの皆様方にボランティアに取り組んでいただいており、それぞれ様々な場面において、活発に活動をしていただいています。
また、地域生涯学習推進委員などに運営していただいている地域生涯学習で、活動されていらっしゃる方々も年間延べ約15,000人となってきており、健康づくりや、仲間づくり、生きがいづくり、そして知立市の活力づくりに大きく貢献していただいているところであります。
『私たちは、先人が築いた地域資源や文化を引き継ぎ、より暮らしやすくするとともに、豊かで潤いのある未来を次の世代へ繋げるために、ともに力をあわせていかなければなりません。』
これは、知立市まちづくり基本条例の前文であります。
本年度も、「自助・共助・公助が息づく協働のまちづくり」のため、家庭のように家族のように、『輝くまち みんなの知立』にすべく、よろしくお願いいたします。
以降、個別の課題への取り組みについて申し上げます。
まずは、安全で安心できるまちづくりに向けての取り組みであります。
犯罪発生件数が、2009年は1882件で、愛知県でワースト1位でしたが、昨年は733件と1000件余の減となるなど着実に減少してきています。
本年度も犯罪を無くすため、毎日の日中・夜間の防犯パトロールや、防犯灯の増設、防犯カメラの公共施設への設置、民間駐車場への設置補助などを引き続き行ってまいります。
また、交通事故撲滅に向けて、年間を通じての様々な啓発活動を引き続き行う他、路側帯などの明瞭化や反射鏡などの交通安全施設の設置、高齢者などの運転免許証の自主返納事業の周知・促進など進めていきます。
一方、防災対策についてであります。
東日本大震災においては、今なお多くの方々がご苦労されていらっしゃいます。
知立市といたしましては、本年度も引き続き、被災地への職員派遣などの支援を行ってまいります。
この地域にも、いつ大きな地震が発生するかもしれません。
昨年度、危機管理局を組織し、これまで以上に力を傾注しております。
とりわけ、昨年度より取りかかっています『業務継続計画(BCP)』については、災害時においても、市民の皆様方にできるだけ迷惑をかけないよう、BCPをもとに訓練・検証を行ってまいります。
阪神淡路大震災から20年余を経過しています。
阪神淡路大震災での死亡原因の多くは、家屋の倒壊や家具の転倒による圧死でした。家屋の耐震化や家具の転倒防止の取り付けなど、引き続き啓発を行ってまいります。
また、重要給水管の整備促進や橋梁の耐震化、同報無線の設置や防災ラジオ購入補助なども引き続き行ってまいります。
阪神淡路大震災では、命の助かった方の多くが、隣近所や地域の方々からの支援に支えられておりました。そうしたことを踏まえ、昨年度、機能別消防団を設立しました。
本年度も、各自主防災会の更なる活性化が図られるよう支援をしていくと共に、消防団の処遇改善を図るなど消防団組織の充実強化を図ってまいります。
知立市は、県外6自治体と防災協定を提携し、また、市内民間宿泊業者とは大災害時における宿泊等確保に関する協定を、各福祉関連施設とは福祉避難所としての協定などを締結しています。
本年度も、防災協定自治体との連携強化に、より一層努める他、大災害時に備えての支援体制確保のため、様々な視点で更なる民間事業者などとの提携・協定を行っていくなどし、大災害が発生しても、知立市からは犠牲者をひとりも出さない、そんな取り組みを自助・共助の重要性を申しあげながら、市民の皆様方と共に進めてまいります。
次に、子育て支援に関しての取り組みであります。
子ども子育て支援事業計画を策定しました。
本年度も引き続き、「次代を担う子どもを豊かに育むまちづくり」、「子どもや子育て世帯の暮らしやすさの向上」に取り組んでまいります。
まずは、子どもひとりひとりにしっかりと向き合うことのできる学校教育環境づくりを着実に行ってまいります。
私たちは、子どもたちに未来を託すわけであります。
政治、経済、文化、芸術、スポーツ、科学など、ひとりひとりの子どもには、無限の可能性があると同時に、それぞれの特性があります。
エジソンも、アインシュタインも、レオナルド・ダ・ヴィンチも、その才能を見出したのは、学校の先生方と言われています。
学校の先生方には、ひとりひとりの子どもにしっかり心配りをし、寄り添っていただき、その特性を見つけ、そして、その良さを伸ばしていっていただくことを期待するところであります。
昨年、少人数学級を小学校5年生まで拡大しました。
保護者アンケートを行ったところ、平成25年度との比較において、少人数学級の満足度の上昇と併せ、『学力水準』、『思いやり』、『体力づくり』、『教員の資質・指導力』への満足度がいずれも上昇しており、本年度は、少人数学級を小学校6年生までに拡大してまいります。
また、子どもサポート教員を小中学校全校に配置する他、先生方の事務の軽減のため校務支援ソフト導入や支援、魅力ある学校設計事業、竜北中学校の校舎改築工事、こどもフェスティバルへの支援を行ってまいります。
また、本年は、子どもたちの放課後の更なる安心安全快適な居場所づくりとして、花山児童クラブの環境改善や、来迎寺児童クラブ増設に向けた実施設計を行っていく他、妊婦さんが、子どもを生み、育てやすい環境づくりとして、個別支援計画やマイ保健師制度を構築するなど、「子どもを生み、育てるならば知立」づくりに着実に取り組んでまいります。
次に、福祉への取り組みについてであります。
ひとりひとりの尊厳を重んじ、人と人とのつながりを基本として、困った時に助け合う“顔の見える関係づくり”、またお互いを認め合い支えあう“共に生きる社会づくり”のための仕組みをつくるため、様々な施策を推進してまいります。
例えば、「福祉を育む意識づくり」であります。
福祉健康まつりの実施や、地域活動団体を通じた広報・啓発、学校教育・生涯学習における福祉意識の醸成などにも引き続き取り組んでいく他、職員が高齢者や障がい者の方々に、より的確に対応するため、福祉関連の職員研修を引き続き行ってまいります。
また、障がい者の方々が気軽に集うことができるよう、ボランティアの皆様方にご支援いただき、引き続きサロンの開設を推進していく他、中央子育て支援センターにおいて、発達障がい児童や肢体不自由児童の療育施設が、関係者の皆様方に安心して気軽にご利用いただき、より効果が発揮されるよう音楽療法士や作業療法士を配置するなどし、運営に努めてまいります。併せて、新たに成年後見制度をスタートしてまいります。
一方、高齢社会に向けての取組みであります。
現在、建設補助にも目処がつき、60床を擁する特別養護老人ホームが、平成29年4月開所を目標に整備が進んでいる他、新たに定期巡回訪問など地域密着型サービス事業者への支援も行ってまいります。
また、認知症サポーターの養成講座の普及促進やメール配信を通じ、地域の皆様で徘徊者などを捜していただくシステム『いまどこネット』を、より多くの方にご登録いただけるよう啓発をしていくと共に、認知症カフェや地域でのサロン事業が、より一層拡大・充実化が図られるよう努めてまいります。
また、昨年度より始めている生活困窮者支援事業。
生活困窮者が、ひとりでもより良い環境をつくることができるよう、引き続き、生活困窮者自立支援事業を全庁あげて取り組んでいく他、新たに生活困窮世帯を対象とした子どもの学習支援を行ってまいります。
総じて、福祉の推進につきましては、困った時に助け合う顔の見える関係、まさに「家庭のような家族のようなまち」、「自助・共助・公助が息づく協働のまち」をつくることが肝要であると考えており、地区社会福祉協議会の設立を積極的に進めてまいります。
本年は、とりわけ高齢化比率と外国人比率が、非常に高くなっている昭和地区において、より良いコミュニティづくりを視点に、地区社会福祉協議会の設立を目指し、事業展開をしていくところであります。
次に、環境施策に関しての取り組みであります。
知立市は、環境美化推進条例を施行しており、ポイ捨て、犬の糞放置の禁止事項を罰則規定と共に定めております。
環境美化指導員や環境美化推進委員の啓発・指導などで、着実に効果は出てきており、更に効果を上げるべく、引き続き糞公害撲滅のためのイエローカード作戦や「愛犬マナー宣言」をしていただいた方への愛犬マナーポーチ配布事業、また移動式の監視カメラなども重点地区には、随時、設置してまいります。
一方、環境施策につきましては、そうした身近な課題への対応と併せ、地球レベルでの環境施策についても、引き続き講じていくところであります。
知立市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)に基づき、省エネ活動、再生可能エネルギーの導入・支援、緑化の推進、廃棄物の削減、環境教育を行ってまいります。
本年は、従来の太陽光・太陽熱発電設備設置補助の他、新たに家庭用エネルギー管理システムや家庭用燃料電池、蓄電池などへの補助制度も行っていきます。
また、新たに公用車として電気自動車を購入していく他、災害時における非常用電源としても活用できるプラグインハイブリッド車も購入してまいります。
昨年、岡崎・豊田・安城・みよしの各市長と共に、名古屋大学のご指導のもと、環境に関しての首長誓約をしました。
環境問題は、広域行政での取り組みが、より効果的であると考えており、全国でもお手本となるような環境先進地域となるよう、しっかりと連携して取り組んでまいります。
次に、健康づくりに関しての取り組みであります。
健康であることは、全ての皆様方の願いであります。引き続き、妊産婦・乳児検診事業、特定年齢がん検診推進事業、インフルエンザ予防接種事業、高齢者肺炎球菌ワクチン接種事業を行ってまいります。
また、糖尿病重症化プログラム事業として、国保加入者の方で糖尿病の方における追跡健康チェックを行い、人工透析患者とならないような取り組みを引き続き行っていく他、昨年度より始めた、健康推進の更なる促進のための健康マイレージ事業の普及促進に努めてまいります。
また、福祉体育館や身近な公園・散歩道の整備、地域に開放されている学校グランド・体育館など、学校施設の整備などを引き続き行っていく他、各種スポーツ教室の開催や高齢者スポーツへの支援、ラジオ体操の普及促進など「いつでも どこでも いつまでも」スポーツに親しんでいただける環境づくりに努めてまいります。
WHO(世界保健機関)で提議している健康は、すなわち「身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態である」ことであります。
様々な検診や予防接種を受けていただくことと併せ、自分を取り巻く地域社会を自分の家庭のように家族のように感じていただけることが、より身体的・精神的・社会的な健康状態になっていくものと思っております。いろいろな関係や絆づくりにもなる、様々な生涯学習活動、市民活動、ボランティア活動などをしていただけるような環境づくりや雰囲気づくり、「自助・共助・公助が息づく協働のまちづくり」をこれからも推進していくところでありますので、よろしくお願いいたします。
次に、まちの活力づくりであります。
知立市は、現在100年に一度のまちづくりとして、知立駅の高架事業、そして街路事業や土地区画整理事業、再開発事業など、知立駅周辺整備事業を推進しております。
昨年2月、知立駅南改札口がオープンしました。現在、1日約3千数百人の方々がご利用されています。
また、平成30年には駅北に再開発ビルが完成し、平成35年には知立駅が高架になるなど、これから、人の成長、子どもの成長と共に、更に目に見えて変わってまいります。
知立駅周辺整備の事業効果、経済効果などが、知立市内全域に最大限波及されていくよう、定住人口、交流人口をより増大させるべく、着実に進めてまいります。
また、市内の中小企業者が元気であることは、まちの活力にも大いに関係するところであります。
市内中小企業者を市民みんなで応援していこう、そんな目的を持った中小企業振興条例に基づき、新商店街推進計画の策定事業を行う他、愛知県と協力し中小企業再投資促進補助事業を引き続き推進していくなど、従来の商工事業費における諸事業に、観光事業なども絡み合わせながら、まちの賑わいづくりを皆様方と共に推進していくところであります。
一昨年、全国山・鉾・屋台保存連合会総会が開催されました。
本年は、国民文化祭が愛知県で開催され、知立市は、『全国人形浄瑠璃の祭典』の会場誘致をし、全国から多くの方々にお越しいただくところであります。
そして、本年末には、いよいよユネスコ世界遺産登録がなされるところであります。
昨年、ユネスコ登録に向けて、県内の関係自治体と立ち上げた連絡会議での活動、併せてユネスコ登録後における事業を行うと共に、知立市マスコットキャラクター「ちりゅっぴ」をより多くの方々に覚えていただき、ユネスコ登録後の知立まつりなどと共に、観光・産業振興の目玉のひとつともなるよう、市外・県外への積極的な発信に努めてまいります。
また、今後、かきつばた、知立公園の花しょうぶ、松並木、弘法さん、ユネスコ登録が期待される知立まつり、ちりゅっぴなど、知立市の観光・産業振興が計画的・機動的に図られていくよう、知立市観光事業推進計画を策定していくとともに、観光協会のあり方についても検討を深めてまいります。
次に、より効率的、効果的な行政運営であります。
多様化する行政課題、厳しい財政運営などを鑑み、本年度も、より効率的で効果的な行財政運営を構築していくと共に、公共施設の知立市としてのより良いあり方について検討し、公共施設等総合管理計画を策定してまいります。
また、個人番号カードの普及促進と併せ、コンビニでの証明発行事業についても準備を進めてまいります。
知立市は、現在、ごみ処理については刈谷市と、消防行政については碧南市・刈谷市・安城市・高浜市と一緒に行い、また、他には定住自立圏の枠組み、環境においては岡崎市・豊田市・安城市・みよし市と共に首長誓約をするなど、様々な行政課題を多様な枠組みの中での広域行政を行っているところであり、本年度も、他自治体と連携しながら行政施策を推進していくところであります。
また、国の補助金や交付金など特定財源については、本年度も、情報を的確かつ迅速に把握し、可能な限り、各種事業に充当していくよう全庁的に取り組んでいく他、税以外の財源確保にも努めていきます。
また、本年度は、税収確保の視点などから、産業誘致について、私自身が、よりリーダーシップを発揮し、進めていく決意であります。
20年以上ほど前の1993年、国会において、『地方分権の推進に関する決議』がなされました。
その際の国会決議は、「国民が待望するゆとりと豊かさを実感できる社会をつくりあげるために、中央集権的行政の有り方を問い直し、地方分権のより一層の推進を望む声は大きな流れとなっている」と述べており、その背景には、成長優先の政策と共に、国民を大切にする政策の必要性などが言われていたところであります。
以前、定住自立圏の講演会で講師の方が、「スターバックスの人気の要因は、コーヒーそのものより、贅沢感や安らぎを感じることのできる雰囲気にある」と仰っていました。
社会貢献などでご活躍されたヘレン・ケラー氏は、「本当に大切なもの、本当に素晴らしいものは、目に見えたり、触ったりすることはできない。心で感じるもの」と仰っています。
我々市役所職員も、住民票の発行や道路の修繕など、目に見える形の有るサービスをしっかり行うことは当然でありますが、市民の皆様方に丁寧な対応や明るいあいさつを行うなどし、目に見えないサービス、安心感や信頼感など、心で感じていただけるサービスの提供をこれからも続けていくところであります。
『目指すべきは、「自分の完全性」と「他人の幸福」。
相手の幸せを祈りつつ、自らは鍛えと向上の日々を歩みぬく生き方。
逆だと悲劇になる。』
哲学者カントの言葉であります。
本年度も、私ども行政は常に自分自身を律し、誠実に着実に、行政改革の不断の実行や情報公開を行いながら、知立市民、知立に集う皆様方に、それぞれ幸せや喜びを見つけていただける環境づくりのために、諸施策を推進してまいる所存でありますので、よろしくお願い申し上げ、施政方針とさせていただきます。
知立市長 林 郁夫