これより議案第75号に対する討論を行います。
まず、本案に対する反対討論の発言を許します。
20番 高橋議員。
○20番(高橋憲二)
議案第75号 愛知県後期高齢者医療広域連合の設置について、反対の討論を行います。
本件は、現在市町村ごとに実施している老人保健制度を廃止し、県段階一本で広域連合を設置しようとするものであります。
国保や被用者保険から75歳以上の高齢者を切り離し、広域連合を唯一の保険者とする新たな後期高齢者医療制度を確立しようという提案であります。
本会議、委員会でるる質問いたしましたように、この制度は国の法律によって骨格の部分がすべて決定されているものであります。
今回、その規約が提案されていますが、地方自治体の意思や意見が反映されたものになっていないのは事実であります。
本多市長も担当委員会で、事前の協議や打ち合わせはほとんどなかったと答弁されているところに、その本質があります。
後期高齢者の医療保険制度という極めて政策的事務について、トップダウンで押しつけて事を行うという手法は、地方自治体の持つ地方自治権をないがしろにするものであり、こういう措置を認めるわけにはいかないわけであります。
このような生い立ちを持つ本件制度は、したがって、幾つかの重要な問題点の欠落、または不明確なまま事が推移するという内容が随所に見られるわけであります。
私は、以下、具体的な問題点を指摘し、本広域連合の押しつけに反対するものであります。
第1は、75歳以上の高齢者の負担がどのように変わるのか、大変重要な問題であります。
医療機関で高齢者が支払う窓口負担は現行も新制度も変わりありません。変更されるのは、新制度による医療給付費の1割を保険料として被保険者が新たに負担するという点であります。
現行制度では、老人保健としての保険料の徴収はありません。ただし、その高齢者が属している国保及び被用者保険の被保険者としての保険税等を負担しているわけであります。
新しい制度のもとで保険料が幾らになるのか、今後の検討課題ですが、厚生労働省の示した全国平均値は月額6,200円、応益割、応納割、それぞれ3,100円という平均値であります。
しかし、現行被用者保険の被保険者になっている後期高齢者の多くは扶養家族だと思われます。
被用者保険の扶養家族は保険料算定から除外されておりますが、新制度では申し上げたように、保険料徴収の対象となっているわけであります。
ここに新たな高齢者の負担増が発生することは自明の事実であります。
委員会でも本会議でも負担増になることの事実を認めておられます。
また、国民健康保険の被保険者で、高齢者のみの世帯、よく老老介護などと言われておりますが、こういう世帯では、夫婦のどちらかが75歳を超えた場合には国民健康保険と後期高齢者保険に分断して所属することになるわけであります。
まさにこの点で、世帯割等の負担が増加するのは必至であります。
このように、新たな制度のもとでは少なくない高齢者が負担増の見込みになるわけであります。
このことは、同時に重要な問題として、後期高齢者の医療給付がふえればふえるほど保険料の値上げに連動する仕組みになっていることから、結局、高齢者の受診抑制、このことにつながることは明らかではないでしょうか。
第2は、保険料の減免規定など、保険料軽減措置についてであります。
新制度でも、7割、5割、3割などの法定減免が定められ、他の会計からの繰入金で賄われる仕組みになっております。
しかし、現在の国民健康保険のもとで、知立市におきましても、独自に積み上げられてきた減免制度が不十分ながら存在しております。
これが広域連合で継承される保障は、討議を通じて明らかになりませんでした。
また、国保法44条による低所得者の窓口負担の軽減措置、これも当然、国民健康保険から除外される後期高齢者でありますから適用になりません。
つまり、今回の後期高齢者広域連合の制度の一本化に当たって、今まで積み重ねてきた地方自治体の独自の減免制度がつぶされてしまうということになれば、明らかな制度の後退であります。
第3は保険料の徴収についてであります。
新制度は、月額1万5,000円以上の年金受給者の保険料を年金から天引きするものであります。
少ない年金からまず保険料を先行して天引きするやり方は、生きるためにぎりぎりの生活をしている少額年金受給者にとっては死活問題であります。
月額1万5,000円の年金受給、大変深刻な受給額でありますが、こういう方々にとってどうして生きていったらいいのか、その悲鳴と叫びが聞こえてくるようではありませんか。
保険者にとっては、取りっぱぐれのない方法であります。しかし、これは基本的人権にもかかわる一方的な徴収方法であり、疑問が残ることは明らかではありませんか。
しかも、それ以下の年金受給者については普通徴収となりますが、1年間保険料を滞納すれば保険証を取り上げられる制度であります。
本会議でも明らかになりましたが、現行制度では75歳以上の方々の保険証は取り上げないことが要綱で明記されております。
後期高齢者が医療を受ける資格を保障しているわけであります。
私はこの制度とこの措置を歓迎するわけであります。
新制度では、1年間の滞納で資格証明書の発行、1年半の滞納で保険給付を一時差しとめる、このことを明記しております。
金のない高齢者を医療から締め出すことを明記しているのではないでしょうか。まさにこの点でも制度の後退は必至であります。
私は委員会でも申し上げましたが、保険料の賦課は広域連合が行います。徴収は市町村の事務であります。
保険料が払えない、被保険者の実態を把握しているのは市町村であり、その実態を的確に広域連合に意見具申することによって保険証取り上げにならないような、私は強い姿勢を市町村、とりわけ知立市が持っていただくよう、ここに改めて強く要求するものであります。
第4は、健康診査、健診制度の後退も問題になりました。
老人保健法の改正あるいは廃止で、現行の一般健診にかわって、今後は各保険者ごとの健診に変更される旨の答弁がありました。
例えば、国民健康保険でいえば、国民健康保険が健診を行う。その健診費用は保険料にはね返る、こういう仕組みに変わるそうであります。
後期高齢者、まさに健診予防がいわゆる重要な年代であります。この健診予防がどのようになっていくのか、本会議、委員会の答弁では必ずしも明らかになっておりませんが、それが保険料にはね返るような仕組みになったとすれば、これも重大な制度改悪と言わざるを得ないのであります。
最後に私が申し上げたいのは、県下一本の広域連合という仕組みで、主権者である住民の声が反映できるのか。最も基礎的な問題であります。
広域連合の議員定数は34人、我が市が属する碧海5市の定数配分は2人であります。
私は、少なくとも63市町村のすべてから、最低1人の議員が選出される、そういう制度の保障が大前提にならなければならないと思うわけであります。
申し上げましたように、後期高齢者の医療制度という、極めて基礎的必須的であり、しかも政策的判断を伴う重要問題を住民からより遠い組織で制度を運用しようという今回の提案で本当にいいのでしょうか。私は改めて警鐘を乱打したいわけであります。
私は、議案の質疑を通じて、少なくとも保険料の設定などを含む重要案件については可能な限り事前に本市議会に報告し、議会の意見を聴取すべきだ、こういう提案をいたしました。
本多市長は、可能な限りの努力を約束されましたが、ぜひ実施をしていただきたいとものだと強調いたします。
以上、5点、基本的な問題について指摘をいたしました。
私は、再度強調し、申し上げます。本制度の最大の問題は、後期高齢者の医療給付がふえればふえるほど後期高齢者の保険料の値上がりにつながるという制度であります。
保険料の値上げは、負担増は受診抑制につながることは明瞭であり、高齢者の命と健康に重大な影響をもたらすことが強く懸念される制度であることを改めて申し上げたいわけであります。
以上、再度強調して、本件の反対討論といたします。
○議長(高木正博)
次に、本案に対する賛成討論の発言を許します。
〔「討論なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(高木正博)
討論なしと認めます。これで討論を終わります。
本案に対する委員長の報告は可決です。
本案は委員長の報告のとおり決定することに賛成の議員は挙手願います。
〔賛成者挙手〕
○議長(高木正博)
挙手多数です。したがって、議案第75号 愛知県後期高齢者医療広域連合の設置についての件は原案のとおり可決されました。
ここで10分間休憩とします。
午前11時06分休憩
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午前11時15分再開