次に、16番 久田議員の一般質問を許します。
〔16番 久田義章登壇〕
○16番(久田義章)
通告に従いまして、順次質問してまいります。
6、7年前に勃発した学力低下論争が始まり、文部科学省は従来のゆとり教育路線から、確かな学力という言葉を合い言葉とした学力向上路線へと政策転換したような気がいたします。
理科系大学生の学力低下から始まり、子供たちの国際学力比較調査の点数の落ち込み、算数、数学及び理科嫌いの増加、全般的な学習意欲の低下、学びからの逃走、さらには学力の二極分化傾向の顕在化、階層状況との関連性の増大、フリーター、ニートとなる若者のさらなる拡大など、さまざまな現象が取りざたされております。
そして、それらの現象と日本社会の構造変動、バブル崩壊後の景気の停滞、勝ち組と負け組の顕在化、ゆとり教育と称される教育改革の動向、子供たちを取り巻く大衆消費社会状況とマスメディアによる包囲、家族解体による育ちの環境の変化等々の要因の関連性がさまざま形で論じられてきました。
子供たちの学力をめぐる言説状況は大変なものであります。一体真実はどこにあるのか。
そもそも子供たちの学力は低下しておるのか、していないのか。低下している、あるいは格差が拡大しているとしたなら、それは主としてどのような要因に基づいているのか。さらには、子供たちにとっての望ましい学力とは、そもそもどのようなものなのか。それを身につけさせるためには私たち大人が何を信じて子供たちとどのようにかかわっていけばよいのかということを考えさせられます。
知的な側面での分ける力とつなぐ力は、その子供の情意、行動的側面での分ける力とつなぐ力に密接にリンクしているのではないかと思います。
情意、行動的側面での分ける力とは、端的に言うなら、自分自身を周囲の人たちとは独立した存在を据える気持ち及びそれに基づいて行為することを指すと思います。
平たく言えば自立性、独立心といったものであり、他方、情意、行動的側面でのつなぐ力とは、自分自身の認識や生活や他者や世界と関連づけ、積極的にかかわろう、つながろうとする気持ちや行動を指すと考えます。言いかえると、コミュニケーション能力、連帯感などがそれに相当するものだと思います。
学力を考える際には、このような両者の関連性をまず視野におさめておかねばならないと思います。
そして、子供たちの学力をどのように育てていくかを構想するためには、知的なトレーニングに偏った対処法を編み出すだけでなく、子供たちが育つ場のあり方、家族やクラスメートとの人間関係の質を総合的に問い直していくことが必要であると思います。
そこで、まず学力低下が危惧される中、学力向上のために、知立市はどのような対応をしているのかお尋ねをしたいと思います。
そして、基礎学力の定着に向けた取り組みはどのような対応をしておられるのか、あわせてお尋ねをしたいと思います。
ゆとり教育の現状ということで、ゆとり教育が学力の低下を招いているのではないかという意見があるが、どのように考えているのか。
そして、学習指導要領が改定され、ゆとり教育から詰め込み教育に転換されるという報道があるが、今後、ゆとり教育がどうなっていくのか、教育長の見解をお尋ねしたいと思います。
子供たちの学ぶ権利を保障するために、まずは授業時間数を確保することが必要だと考えますが、実際のところ授業時間数は確保されているのかお尋ねしたいと思います。
平成19年度全国学力学習状況調査について、学力テストを実施すれば必ずしも学力そのものが上がったという保証はありません。
結果を今後における教育行政や学校の授業改善、子供一人ひとりの学習改善を図る有効な資料として活用できるということであるが、結果をどのように扱っているのかをお尋ねいたしまして、私の第1問とさせていただきます。
〔16番 久田義章降壇〕
○議長(石川信生)
石原教育長。
○教育長(石原克己)
それでは、学力低下についてのお尋ねにお答えをさせていただきます。
まず1点目であります。学力低下が危惧されている中、学力向上のために知立市はどのような対応をしているかということでございます。
教育委員会では、県教委の示す基本理念と学習指導要領の趣旨及び知立市民の誓いを踏まえて、知徳体の調和の取れた人間関係を目指した教育を進めております。
知というのは確かな学力の育成、徳というのは豊かな心の育成、体というのは健やかな体の育成であります。これらの調和の取れた子供の育成を目指して教育活動を展開しております。
その中で、知育は徳育、体育と同様に大切なものであります。確かな学力を育成するために、日々の授業が最も大切であります。各小中学校では子供たちが意欲的に取り組む授業、わかる授業を目指して取り組んでおります。
100の施策よりも1人の教師といわれております。よりよい授業を進めるためには先生方の授業力を向上させることが最も大切であります。
そのために、市教育委員会といたしましては、長期研修員の派遣、教科等指導員による授業研究会などを行ってまいりました。
さらに、昨年度から授業力向上プロジェクトを発足させ、若い教員が自由な発想で互いに磨き合い、高め合う場を設定いたしております。
また、学校ではそれぞれ工夫して現職教育や校内授業研究会の充実に取り組んでおります。
次に、基礎学力の定着に向けた取り組みはどのようなものがあるかということであります。
小学校では国語と算数、中学校では数学と英語と理科を中心に少人数授業を実施しております。意欲的に取り組む授業、わかる授業を実践するために、指導内容や指導方法の工夫改善を図りながら、児童生徒一人ひとりの理解の状況や習熟の程度に応じたきめ細かな指導の充実に努めております。
また、補充学習の時間を週時程の中に組み込み、基礎学力の定着、個に応じた指導の時間に充てています。
また、夏休みなどの長期休業中にも、学習相談日を設けたり、図書室やコンピューター室を開放したりして、子供たちの質問に答えられるようにもしております。
このようにして、基礎学力の定着を図っております。
次に、ゆとり教育についてであります。
ゆとり教育が学力の低下を招いているのではないかという意見に対する考えであります。
ゆとり教育と学力の関係についてでありますけれども、ゆとり教育が学力低下を招いたという認識は持っておりません。そもそも学力とは知識の量のみではなく、学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力なども含めてとらえるべきであります。
ゆとり教育を進める中で、学習意欲を高め、身につけた基礎、基本を活用して、思考力、判断力、表現力を伸ばしてきたと、このように考えております。
次に、学習指導要領の改定によりまして、ゆとり教育から詰め込む教育に転換されるという報道が今なされているわけであります。ゆとり教育は今後どうなっていくのかということでありますけれども、現在、新しい学習指導要領の検討が進められております。
その中で、授業時間数の増加についても検討をされております。ゆとり教育から詰め込み教育への転換ではないかという危惧する声もありますが、そうとは考えておりません。
現行の学習指導要領の生きる力をはぐくむという基本理念は、新しい学習指導要領でも変更するものではないと認識しております。
授業時間数がふえることによって、子供たちが学習にじっくり取り組める時間が確保されると考えております。
ゆとりか詰め込みかということではなくて、基礎的、基本的な知識、技能の定着と、これらを活用する力の育成を、いわば車の両輪として伸ばしていくことが必要であると考えております。
次に、授業時間の確保についてであります。
授業時間数につきましては、市内全小・中学校が平成17年度の学校2学期制の完全実施以前から、現行学習指導要領における教育課程編成における総授業時間数の標準をすべての学年すべての教科において上回って実施をしております。
文部科学省の教育課程編成上の標準は、小学校では各教科、道徳、学級活動、総合的な学習時間と時間を合わせた総授業時間数であります。
小学校の1年生は782時間、2年生は840時間、3年生は910時間、4年生から6年生は945時間であります。中学校においては、さらに選択教科に充てる授業時間を加えた時間数であり、すべての学年で980時間と定められております。
この時間数の中には、学校行事等の時間は含まれておりません。現行学習要領で示された総授業時間数の標準は、年間35週、175日で計算されておりますが、平成18年度の年間授業時数を見ますと、各学校とも年間44週、200日程度の授業日を実施しております。
したがって、学習指導要領に示されている標準授業時数に加えて授業を行ったり、遠足、学芸会、運動会などの行事も十分に行うことができております。
次に、全国学力、あるいは学力状況調査の結果、これをどのように授業の改善に生かしていくかということであります。
これにつきましては、教育委員会は教育委員会で分析していきますけれども、各学校でそれぞれ分析し、あるいは各学級、それをもとにしていくわけでありますけれども、しかし、学力テストというのが4月に行って、今、結果が来ている。そして、行ったのは中学校3年生、小学校6年生であります。それを生かす時間は、今の子供たちにはないわけであります。
夏休み前に結果の送付をお願いしたわけでありますけれども、おくれたわけであります。
そうしますと、それを即その子供たちに生かすということはなかなか難しいわけでありますので、学校の全体の取り組み、そういうものを把握して学校の傾向をとらえていくということが必要なわけであります。
来年度実施の中では、ぜひ夏休み前には結果をいただいて指導に生かしていきたいと、そんなふうに考えております。
○議長(石川信生)
16番 久田議員。
○16番(久田義章)
答弁、ありがとうございました。
知立市の対応としては、100の施策より1人の教師といわれており、よりよい授業を進めるために先生方の授業力を向上させておると、そういう答弁でした。
それと、基礎学力の定着については少人数学級を定着させて読み、書き、計算を反復学習しておると、そんなようなお話でした。
ゆとり教育に関しましては、教育長はゆとり教育が学力の低下を招いたという認識は持っていないと、こういうお話でした。
授業時間の確保については、答弁の中で、中学校においては選択教科に充てる授業時間を加えて980時間を確保しておるということでありますけれども、この選択教科というのをもう少し詳しく教えてください。
私は、基礎学力の定着というのは、やっぱり読み書き計算が中心だと思います。読解力というのはもっと私は大事になってくるというふうに思っております。
いつも教育の話があると読書タイムだとか、そんなようなお話が出てくるわけですけれども、今、どのような対応をしておられるか、そこら辺もちょっとお聞きしたいと思います。
教育は、要するに自習的でなければなりません。自習的な教育でなければ教育の効果を上げることはできるものでないというふうに私は思っています。
そういうことからして、とにかく私は読書が大事だというふうに思いますから。
もう一つ、習熟度別授業、そもそもねらいというのは、進路別に子供たちを分けて授業を行えば授業がわかりやすく、学力の向上の決め縄と思うが、そこら辺の取り組みも一つ教えていただきたいというふうに思います。
それから、先ほど佐藤議員のときにもいろいろと話題になっておりましたけれども、学力テスト、平成19年度全国学力学習状況調査について、この点につきましては、評判が悪いのは2つあるんですね。
採点データというのを、中学生はNTTデータ、旺文社に任せたと。小学生の採点はベネッセに任せたと。それが、今度、人材派遣の外注にどうも回ったらしいんですよね。
だから、採点が余り上手にいっていないという、そういううわさというか、そういうものをちょっと読んだ覚えがあります。
それともう一つ、佐藤議員もさっき言ってみえましたけれども、足立区の例を出されたと思うんですが、東京の方は学校選択制ができるわけなものですから、この学習テストを上げていくと人気校になっていくということで、このテストの時にカンニングをやらせたり、あるいは先生が隣で答えを教えたりということで、佐藤議員のさっきの答弁では、このテストのためのテストは知立市はやっていないということで、私はほっとはしたんですけれども、一つ、今、教育長が言われたように、どのように生かすかということで、各学校で、あるいは各学級で、中3は卒業しちゃうし、小学校6年生は中学校に上がってしまうということで、その子に生かせれないから学校全体の取り組みの中で生かしていくということであるわけですけれども、これが、私1個心配しておるのは、3つの中学校が知立市にあって、7つの小学校があって、どの学校がいいかということを競争させるようなことが出てくるといけないという心配があるんですよね、競争させるという。
南中と知中と竜北でどの学校がいいかというふうで競争させてしまうと、さっき言ったようにテストのテストになっちゃうものだから、そこら辺の考え方を再度お聞きしまして第2問といたします。
○議長(石川信生)
石原教育長。
○教育長(石原克己)
まず、中学校の授業時間数、980時間、これは小学校と比べて選択教科の時間数が含まれているということであります。
今は中学校では選択教科の時間というのがありまして、それは国語の補助授業とか体育の補助授業ではなくて、それぞれ得意なものをやりたい。例えば、以前私がやっているときには体育で柔道を選びたい、柔道を1年間やる。例えば、国語では古典、百人一首などをやりたいとか、それぞれ課題を持って子供たちが取り組む。
つまり、子供たちの主体的な学習を行うものであります。それが選択教科であります。
それから、読解力。やはり、これからは読解力というのが一番ポイントになってくると思います。
これは、ご承知のようにOECDの学力テストの中でも日本の子供たちの学力、特に読解力に問題があるということであります。
そういうことで、これからの教育の中で読解力というのが非常に力を入れてやってくると思います。
私も、10月に先進的に研究実践をしております横浜国立大学の附属中学校に行って少し勉強をさせていただきました。
授業を見せていただいたわけでありますけれども、読解力の育成、国語の授業をやっていると思ったら違うわけです。理科の授業をやっておりました。
理科で子供たちが実験をし、情報をインプットして、それを自分の考え、あるいはグループで話し合って、それをわかりやすくまとめて発表、つまりアウトプットする。つまり、インプットして、思考があり、アウトプットする。
これが一つの読解力、こういうことを読解力というということを聞きまして、読解力というのは、以前からそういうことを聞いておったわけですけれども、本を読んでそれについて感想だとか、そういうのを書くのは違うよということは聞いておりましたけど、実際にその授業を見まして、そういうものまでを読解力というのかと。
その中で、体育の中の読解力というのは何かと。子供たちがいろんなねらいを持って実践する。それに対して、子供はさまざまな思いをめぐらす。それについてまとめて発表すると、こういうものもインプットの中で、体験というインプットの中でそういう力をこれから育てていくことが大切だということであります。
こうしたことを、やっぱり家庭の方でもできるわけであります。
今、11月からノーテレビデー、ノーゲームデーというのを始めているわけであります。テレビを見ない日に、ゲームをしない日に早く帰宅する時間を決めて家族で団らんを、そのときは、やっぱり子供たちも学校であったことを自分なりに整理して相手に伝える。保護者の方も、そういうことが、そういうことも大切ではないかということもある。もちろん読書なども必要なわけであります。
そうした読解力というのは、これからの学習指導要領の改正の中で大きなウエイトを占めてくるものであるという認識を持っております。
それから、習熟度別授業でありますけれども、やはりこれはやり方によってプラスになる場合もマイナスになる場合もあります。これは学校の方で十分に承知しております。
つまり、先生たちが機械的に習熟度別に分けますと、やはり、ちょっと引け目を感じたりする子供たちもおります。子供たち自身でどちらへ行くか、それは決まっているものではなくて、やっぱりこの授業でこういうふうに行くと、そういうような、ある程度の子供たちの判断によってやっていく。そうしないと、やっぱり子供たちの学習意欲という面から問題が出てくると。
しかし、子供たちがゆっくりと丁寧に教えてくれる、少人数の中で。それで、わかる喜び、そうすると、子供たちはこれからもあそこへ行ってわかるようになろうというような気持ちを持ってくると思います。
そんなようなことで、やり方によっては失敗するケースもありますけれども、今はほとんど長いことやっておりますので、先生方はそのことについて十分な知識を持っております。
それから、学力テストにつきまして、知立市では学校選択制というのは今のところ市民の方たちからもそんなに大きな声は出ておりません。
知立市は地域の中で子供が育ち、地域性というのが非常にあるところであります。防犯ボランティアも地域が母体となっております。地域が崩壊したところでは選択制というのもいいかもしれませんけれども、知立ではやっぱり選択制はなじまないのではないかということがあります。
学校のランクをつけて、学校を選択させるということは考えておりません。
そういうことでありますので、いろんな学力テストの成果を示すためにいろんな取り組みをという、先ほどもそういうお話ありましたけれども、そういうようなことは知立市では行っておりません。
それで、やはり競争になる、これは非常に危惧しているところであります。そういう関係で、今回、各学校へ個人表を配りました。各学校から本人あてに個人表を配ったわけであります。
そのときにも、各学校から保護者あての文章を出しております。平成19年度全国学力学習状況調査の結果の取り扱いについてということで、成績とこのプリントを持って子供たちは帰ったわけであります。
そこの中にも目的が書いてありまして、その中で学校の序列化や過度の競争が生じることを防ぐため、学級の結果については公表しませんと。学校の結果はもちろん、1組はどうだと、2組どうだと、そういうことも公表しませんという結果については分析して、今後の児童の指導や授業改善に役立てていきますということで、裏面には個人表の見方についてということをつけて返しております。
保護者の方にもそういったことを十分に知っていただいてご理解をいただいているところであります。
以上であります。
○議長(石川信生)
これで、16番 久田議員の一般質問を終わります。
ここで10分間休憩いたします。
午後5時08分休憩
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午後5時19分再開
○議長(石川信生)
休憩前に引き続き会議を開きます。