金魚椿
八橋町(薬師)

今から千年もむかしのこと。ある旅の僧が、東海道を通られた時の話です。とちゅう八橋のあたりで、一軒の農家によられ、昼食をとられました。家の人たちは、たいへん親切にもてなしたので、旅の僧はじゅうぶん疲れをいやすことができました。
その家を去る時、旅の僧は家人に、
「親切にしていただいてありがとう。お礼に何かおいて行きたいが持ち合わせがないので弁当につかったこのはしを地にさしておくから大切にするように、きっとめずらしい木になるから。」
といって立ち去られました。
家の人は、言われたことをよく守り、朝夕、水をやり、心をこめて育てました。
木はだんだん大きくなり、やがて先が三つにわれた葉をつける椿の木になりました。葉が金魚の尾のようなので、村人たちは、この木を「金魚椿」と言うようになりました。
後に、旅の僧は弘法大師とわかり、村人たちは、弘法さまを信仰するようになりました。
金魚椿は、現在、八橋町薬師の鎌倉街道沿いにあり、これをさし木にして、だいじに育てる人もあります。別名に、この椿は、万葉椿ともいわれています。
おしまい
更新日:2023年08月23日