猿渡川
弘法町(弘法下)
むかし、弘法大師が関東から都へお帰りになる途中、知立の辺りをお通りになりました。川はあるが橋がありません。川下を見ますと、親猿が三匹の子猿をつれています。兄猿と弟猿二匹は、仲が悪くけんかをしています。
どうして渡すだろうかと、大師様が見ておいでになりますと、親猿は、最初に、兄猿を背負って浅瀬を渡り向こう岸にいき、兄猿一匹を置いて引き返しました。 二回目には、弟猿を向こう岸に渡し、兄猿をつれて帰りました。三回目には、兄猿を一匹、こちら岸に残して、末の弟猿を向こう岸に渡しました。四回目には、 また、兄猿を背負って、こちらの岸から向こう岸に渡り、けんかをしていた兄猿と弟猿をいっしょにすることなく、じょうずに川を渡って行きました。
猿でさえ、困難に出会えばいろいろ考えて、その困難に打ち勝っていく姿を大師様はご覧になって、非常に感心なされ、その川の名を猿渡川(さわたりがわ)と名づけられました。
猿の渡った所は、弘法山遍照院の南下のあたりと伝えられています。
おしまい
更新日:2023年08月23日