片目の鯉
西町(神田)
知立神社の御手洗池のこいは、片目であると本に書かれたり、また言い伝えられていますが、それにはこんな話があります。
知立の西町に住んでいた長者の家は、代だい目の悪い人が多かったのでした。
ある時、長者の家のかわいい娘さんが重い病気にかかりました。いろんな手当てをしてもなかなかなおりません。そのうえ、目が見えなくなりそうになりました。
両親はたいへん心配して、これはもう明神さんにお願いするほかない。「娘の目がなおりますように」と、願をかけ、毎日、毎日、一心におまいりしました。
二十一日の満願の日、ふしぎなことに、娘の片方の目が見えるようになりました。たいへんよろこんで明神さんにお礼まいりをいたしました。
それから御手洗池のこいは片目になったということです。明神さんのお使いのこいが、片目を娘さんにあげたからです。
やがて、その話が伝えられて、御手洗池の水で目を洗うと目の病気がなおると信仰されるようになりました。
そのころは、池の水もきれいで、目を洗う人もあったということです。
池には、目を洗う人たちのために橋のすぐわきに、さくのないところがあって、水面近くまで降りられる階段が今も残っています。
おしまい
更新日:2023年08月23日