きつねとおじいさん
八橋町(赤羽根)
むかし、八橋の赤羽根というところに、ほら穴があって、きつねの親子がすんでおりました。ほら穴のそばには、小さい川がながれておりました。
ある日のこと、川の近くの田んぼでひとりのおじいさんが、おもいくわをふりあげて、田をたがやしておりました。
「キャン、キャン、キャイン。」きつねのひめいが聞こえてきました。
「なにごとだろう」と、おじいさんが川へいってみると、きつねの子どもが川にはまってもがいていました。おじいさんは、かわいそうに思いました。
「今、助けてやるからな。」といって、川の中から引っぱりだしてやりました。
その夜、おじいさんは、家の外で何かもの音がするのできみ悪くなって、そっと戸を開けてびっくりしました。外には、たき木がいっぱいおいてありました。昼間助けたきつねが、親ぎつねといっしょに、おれいに持ってきてくれたのです。
それから三日すぎました。おじいさんは、また、川の近くの田んぼで田をたがやしておりました。ひと働きして、あぜに腰をおろして休んでいると、急に、まわりが暗くなってきました。
びっくりぎょうてんしたおじいさんは、「どうなったんだろう」とあたりの様子を見まわすと、きつねの親子が化かしたことがわかりました。
おじいさんは、暗い中をあぶなげな足どりでぬけ出て、ほら穴までたどりつき、きつねの親子に、「川に落ちたのを、助けてやったのに、この恩知らずめが。」と強くしかりつけました。
その夜、おじいさんは昼間のつかれでぐっすり寝てしまいました。あくる朝、目をさますとどうでしょう。あんなにたくさんあったたき木があとかたもなくなくなっていました。しかられたきつねの親子が、どこかへ持っていったらしいのです。おじいさんは、
「きつねをしかって損をしたなあ・・・・。」とつぶやきました。
おしまい
更新日:2023年08月23日