狐塚
来迎寺町(南天白)

むかし、牛田に情け深い正直者の七太郎という人が住んでいました。七太郎には、七松という男の子が一人ありました。
その七松が六歳になった時のことです。七太郎は、来迎寺の天白の田んぼへ行くのに、七松を連れて行きました。
七松は動物が好きだったので、父が仕事をしている間、一人できつねの所へ遊びに行き持って来た弁当をきつねといっしょに食べていました。
喜ぶきつねを七松はかわいがり、油揚げなどを持って行っては与えるようになりました。きつねも子どもがなかったので、七松を自分の子のようにかわいがって遊んでいました。
ある日、七太郎は、日が暮れるまで野良で働き、わが子七松を連れ帰るのを忘れて、家に帰りました。
母親に、「七松の姿が見えないが、どうしました。」
と言われてはじめて気がつき、家中で心配しているところへ、きつねが七松を無事に家まで送ってきました。そのようすは親が子を連れて来るようでした。きつねが病気をすれば、七松は見まいに行き、何くれとなく看病をしてやりました。七松が病気になれば、きつねが介抱をしてくれました。
こうして、数年は、親と子のような愛情の交わし合いの日が続きました。
ところがある日、きつねは死んでしまいました。七松の力の落しようは、はたで見る目にも哀れでした。七松の家では、きつねの穴のところに塚を築いて、ねんごろに葬ってやりました。これが天白のきつね塚です。
おしまい
更新日:2023年08月23日